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雪国型ZEHとは? 高水準の断熱・気密性能で実現する、快適で省エネな暮らし

新潟日報sumica編集部

国は2025年4月から全ての新築住宅に、高断熱・高気密に作られたエネルギー消費量を抑える「省エネ基準」への適合を義務化し、30年には、さらに基準の厳しい「ZEH(ゼッチ)」水準に引き上げる方針です。

新潟県では、国のZEH基準を上回る多雪寒冷な気候に合わせた「雪国型ZEH」の住宅を推奨。夏は涼しく、冬は暖かいこの住宅について、県雪国型ZEH推進協議会会長で、長岡技術科学大学の上村靖司教授(59)に聞きました。

上村靖司教授

雪国型ZEHは、県が2050年までのカーボンニュートラル(※温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現を目指し、普及に取り組んでいる住宅です。

エネルギーを極力必要としない高断熱で、省エネ設備と太陽光発電などの創エネ設備を組み合わせることで、年間のエネルギー収支実質ゼロを目指す「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の国の基準より、断熱性能と気密性能で上回ります。

 雪国型ZEHのポイント 

雪国型ZEHは、国の基準より厳しい「HEAT20」の基準を採用しています。

雪国型ZEHのクラスは断熱性能の違いで三つに分かれ、G1を基本に、G2、G3と向上します。

上村教授は「国内でも厳しい基準を満たしている。(断熱性能向上による)消費エネルギーが減ることで、冷暖房費は節約でき、家計にも優しい。冷暖房を24時間利用しても、電気代は気にならない」と強調します。

ZEHより工事費はかかりますが、電気代の節約で比較的短期間で費用回収が可能ということです。

各基準における断熱性能・気密性能比較
省エネ基準と断熱工事費(概算)
※気密性能確保のための工事費等の試算は含まれていません。
また、以下の条件により新潟県が試算したものであり、実際の状況により異なります。
〔 住宅モデル 〕
・5地域(新潟市)、木造2階建て延べ面積120㎡の一般的な住宅
〔 断熱工事費算出条件 〕
断熱工事費は、断熱材等の材料費とその工賃(令和4年1月)
〔 冷暖房費算出条件 〕
・新潟市120㎡の木造2階建て住宅、暖房設定室温24℃、冷房設定温度27℃、湿度60%、24時間冷暖房(ルームエアコン)、拡張アメダス気象データ2010年版の新潟市における標準年気象データ使用、R4.1月時点の電気料単価(30円/kWh)で算出

また、断熱性能の高い住宅は、熱が逃げにくく、部屋ごとの急激な温度差が少ないことで、健康面でも良い効果があるといいます。

上村教授は「(急激な温度変化による、血圧の乱高下で起こる、心筋梗塞などの健康被害の)ヒートショックは起こりづらい。トイレやお風呂に行っても快適に過ごせる」と説明。

一方、雪国型ZEH基準には該当しませんが、県では建材に県産の木材使用を推奨しています。

木は伐採しても、植えれば二酸化炭素を吸収して成長する再生可能な資源です。県産材を使うことは、林業の「植える→育てる→収穫する(使う)→また植える」という循環を生み出します。上村教授は「県産材を使うことが、動物と人間の境界線だった里山の整備につながる。県内のクマ出没問題の解決にもつながる」と、効果を解説します。

地域にあった性能や環境に優しい家づくりなどさまざまな理由で、雪国型ZEHを検討する人がいます。

上村教授は「多少コストが上がっても性能が高い住宅は、暮らしを豊かで楽にする。健康の面でも重要だ。そこをぜひ考えてほしい」と話しています。

 

※温室効果ガス:地球温暖化の原因とされる二酸化炭素やメタンなどを含むガスの総称