【脱炭素】省エネ住宅普及支援 県施設の太陽光発電推進
2月下旬、久々の降雪で外は冷え込んでいたが、エアコンの電源を切った居間は驚くほど暖かかった。
気温計が示すのは17度。
長袖Tシャツ姿の家主の男性(44)は「家中どこでも暖かい。電気料金は上がっているが、省エネのこの家ならそれほど心配せず暮らせる」と笑顔で語った。
昨年11月に新潟市中央区に新築されたこの住宅は、省エネと太陽光発電を組み合わせてエネルギー収支ゼロを目指すZEH(ゼッチ、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)住宅で、さらに断熱性能と気密性能のレベルを上げた本県独自の「雪国型」と呼ばれる。
脱炭素は花角英世知事が力を入れる最重点施策の一つ。
その目玉と位置付けるのが雪国型ゼッチの普及だ。
冬場の日照不足から太陽光発電は不利とされる本県の特性を補い、建材と設計で従来型のゼッチ以上の省エネを実現する。
工事費は一般的な省エネ住宅や従来のゼッチより割高になるため、県は2023年度、国の補助に上乗せした支援を始める方針。
補助額は雪国型と太陽光パネルの設置を組み合わせた場合で、総額100万円程度になる予定だ。
対象は100戸を見込み、23年度当初予算案に1億2790万円を計上した。
県自らも脱炭素に率先して対応する。
23年度から5年間で、県有施設のおよそ20カ所に太陽光パネルを設置する。
「PPA(電力販売契約)」と呼ばれるモデルの活用で、屋上や屋根などを設置スペースとして事業者へ貸し出し、県は使用電力分を支払う。
現在、太陽光発電設備がある県有施設は9施設で全体の1・6%。合計の最大出力は161キロワットにとどまる。
今後導入する約20施設ではより大規模な発電設備も想定し、合計発電量は最大出力2~3メガワットを目指す。
23年度予算案では、事業者の参入を促すために設備工事費の一部を補助する。2億7498万円を盛った。
県公用車の次世代自動車への更新も進める。23年度は1億537万円を計上し、軽の電気自動車を中心に35台程度を導入する予定だ。
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農業では、ヤシ殻を農地に投入することにより温室効果ガスの発生を抑える栽培試験など、技術開発に1431万円。
土壌中に炭素をため込む効果がある有機農業の導入など、モデル産地の取り組み支援に4200万円を盛った。
二酸化炭素の吸収力強化に向けては、森林の木材量などを航空レーザーで計測し、データベース化する事業に4595万円を計上した。データを活用して伐採と再造林を促すことで森林の若返りを図る。
50年の温室効果ガス排出量実質ゼロに向け、県は30年度に13年度比で46%減らす目標を掲げている。
環境政策課の覚張(がくはり)昌一課長は「目標達成にはこれからが大変。脱炭素への対応は設備投資に費用がかかるが、長い目で見ればプラスになる。取り組みを県内全体に広げていきたい」と話した。
※新潟日報 2023/3/15 掲載