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【新潟】共働きでも家計が苦しい?~理想と現実の年収ギャップから見える、家づくりのお金の課題と解決策~

昆知宏(新潟住まいのお金相談室 代表)

あなたは「理想の世帯年収」について、どのくらいの金額を思い浮かべますか?

マイナビが2024年11月に実施した「共働き正社員の仕事や私生活に関する意識調査」によると、理想とされる世帯年収の平均は、なんと1,126万円でした。

ですが、実際の平均世帯年収は約806万円。

なんと320万円ものギャップがあることが明らかになりました(!)

さらに、調査した46%の人が「家計が苦しい」と感じている、とのこと。

共働き世帯でも、経済的な不安を抱えている現状が分かります。

ファイナンシャルプランナー(FP)の視点からも、この調査結果は現実を的確に捉えていると感じました。

「生活が苦しい…。なら、どれくらいの収入があれば、生活が楽になるの?」という具体的な数字が可視化され、興味深い調査結果となりました。

年間320万円もの差額は、賃上げや減税だけでは到底埋めることはできません。つまり、他力本願では解決できないのです。

この結果は、各家庭の地道な努力が差を生む時代に本格的に入っているのだと、読み取れます。

今日はこの調査結果を基に、共働き世帯が直面する「理想と現実のギャップ」、そしてその具体的な解決策について、考えてみたいと思います。

特に、これから家を建てようと検討している方にとって、「家計の余裕度」は住宅ローンの組み方や生活設計を考える上でとても重要な視点となります。

「理想の世帯年収は1,126万円」のリアル

「理想の世帯年収1,126万円」という数字を見て、あなたどう感じたでしょうか?

高すぎると感じる方もいれば、妥当だと考える方もいるかもしれません。

ちなみに、子どもがいる世帯では理想年収がさらに高く、1,247万円という結果が出ています。

私はこの数字は的確で、むしろ現実的だと思いました。

特に、新築住宅の購入を計画している家庭や、幼いお子さんがいる世帯では、教育資金・住宅ローン・老後資金という3大支出全てをまかなう必要があります。

そのため、年収1,000万円以上を目指すのは自然な感覚と言えるでしょう。

例えば、新築住宅の場合、土地代・建築費・諸費用を合わせると5,000万円を超える支出になるケースも珍しくありません。35年ローンで計算すると、月々13〜15万円の返済が一般的です。

これに教育費や生活費が加わると、想定以上に出費がかさむのは当然です。

つまり、「理想の年収」とは以下のような生活を実現するための現実的な目標値なのです。

• 無理なく住宅ローンを支払える
• 子どもに十分な教育費をかけられる
• 家族で長期休暇に旅行に行ける
• 老後の資金も着実に貯められる

これらは、今の日本で不自由のない生活をするためには現実的な目標金額となっているのです。

家計が苦しいと感じる根本的な理由

調査によると、家計が苦しいと感じている人の平均の世帯年収は716万円

一方、「苦しくない」と回答した人の世帯年収は平均886万円です。両者の間には、約170万円の差がありました。

ファイナンシャルプランナーとして実務で接している感覚からも、これは非常に現実に沿った数値だと感じます。

例えば、新潟で5,000万円クラスの住宅を購入する場合、世帯年収900万円以上が一つの目安となります。

ただし、これはあくまでも「苦しくはない目安」としての数値です。余裕を感じるにはさらなる収入が必要です。

家族旅行を楽しんだり、希望の車を購入したいという望みを叶えるには、プラス200万円ほど必要になってくるでしょう。

つまり、800〜900万円の年収でも家計は回せるものの、プラス100〜200万円が"ゆとり度"の有無を大きく左右するのです。

この観点から見ると、先ほどの理想とされる世帯年収の数字も納得できます。

ちなみに、新潟のような地方都市では、首都圏と比べ物価や住居費がやや低めです。そのため、子育て世帯でも年収1,000万円を超えると、比較的余裕を感じやすい傾向があります。

管理できていない「なんとなくの支出」

共働き世帯では、日々の忙しさから家計簿をつける時間が取れず、クレジットカード払いやサブスクリプション契約など「気づいたときには引き落とされている支出」が積み重なりがちとなります。

外食の頻度もつい増えがちです。(しかも最近、外食はとても高くなりましたよね)

夫婦間でお金の情報共有がされていないケースでは、互いの支出を把握できず「どこから見直せばよいのか分からない」という相談も多く寄せられます。

例えば、夫婦それぞれがAmazonプライムやSpotifyに個別で加入し、一世帯で重複して課金しているケースもちらほら見受けられます。笑い話のようですが、実際によくある事例です。

固定費の見直しが進んでいない

「固定費」は、一度設定したら、そのまま放置されやすい項目です。

例えば、一見賢い選択をしているようで、さらに改善の余地がある例として

• auからUQへの乗り換えで満足
 ⇒さらに安くできる

• 保険屋さんの相談窓口で保険を見直した
 ⇒今よりも少し良くなっただけで、そもそも不要な保険に入っている

• 車にこだわりはなく安い中古車を選んだ
 ⇒修繕・維持費や将来の売却価値を考えると、1年当たりのコストは逆に割高

• 燃費重視でハイブリッド車を選択
 ⇒総合的なコスト計算ではガソリン車がオトク

見直したり効果的に行ったりしているようでも、まだ見直せる余地が多くの家庭で見られます。

特に、これから住宅ローンを組む方にとって、今後発生する最大の固定費である住宅費をどう設定するかが、家計のカギとなります。

月々の返済額だけでなく、将来的な金利変動リスクにも備える必要があります。

住宅ローンは借入額が大きいほど金利変動の影響も大きくなるため、金利上昇も考えて慎重な計画が求められます。

この点を間違うと、細かい支出の見直しだけでは住宅ローンの返済ができなくなってしまうからです。

解決のカギは「家計の可視化」と夫婦のチームワーク

この話は今に始まったことではなく、昔から「平均年収プラスα」というのが生活にゆとりをもたらす基本原則でした。

つまり、早くから気づき、改善に向けて行動を起こした人の勝ちです。他の人と同じような行動をとればとるほど、平均に近づいていってしまうからです。

では、共働き家庭が今から実践できる具体的な対策とは、一体どのようなものがあるのでしょうか。順番に見ていきましょう。

① 家計の全体像を整理する

まず夫婦の収入・支出を合算して家計を知り、全体の流れを可視化することです。

特に家を建てる前には、「住宅ローンを組んだ後の家計変化」を感覚的にも理解しておく必要があります。

住宅購入後に「返済はできているけど、貯金が全然増えない」という状況になった場合は、危険信号です。

そのような事態にならないためには、事前のライフプラン設計が重要です。

家計の流れが見えていれば、ほとんどの失敗を防ぐことはができるからです。

② 目的別の貯金と支出の明確化

将来に備えるためには
「何のために」「いつ」「いくら」必要か?
ということを明確にすることが重要です。

特に教育資金と老後資金は比較的長い準備期間があるため、資産運用との相性が良いです。

資産運用を取り入れることで、給与以外の収入源からも準備でき、不安を「戦略」に転換できます。

③ 夫婦で定期的に"お金会議"を

年に1〜2回で構いませんので、家計の方針を話し合う夫婦会議を開きましょう。

住宅購入前は、人生で最も大きな金額が動くタイミングです。

この二度とない"若くて、大きなお金を動かす"前の機会を、見直しの絶好のチャンスとして活用しましょう。

そして貯めるだけでなく、目標達成の節目ごとに夫婦でごほうびを設定しましょう。

※私の場合、過去に目標を達成した際に東京駅の東京ステーションホテルに宿泊しました。いい思い出になっています。

家を建てるなら、お金も「今こそ見直しのチャンス」

「家を建てること」は、人生の大きな選択です。

また「お金と向き合うこと」も、同じくらい大切な選択です。

ファイナンシャルプランナーとして、私は「家づくりをきっかけに家計を見直し、将来設計を整える」ことを何よりお勧めしています。

理想の年収を力技で獲得することも一つの方法で、特に若い方にはおすすめです。スキルアップして現在の仕事に見切りをつけ、理想とするステージに自ら上り詰める努力は、若いほど実りやすいものです。

つまり若い時から蓄財すれば、運用することでさらにパワーが増すということです。

でも実際にはそれが簡単ではないことも知っています。難しい場合は、これまで説明してきた通り、夫婦で計画と戦略を立てることが最大の武器となります。

専門家に聞くなどして、家を買う前にまずライフプランを考えましょう。

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~新潟住まいのお金相談室ブログ「共働きでも家計が苦しい?〜理想と現実の年収ギャップから見えるお金の課題と処方箋」より〜