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住宅価格は15年で1000万円上昇!? 価格の高騰と“買い時”の見極め方

昆知宏(新潟住まいのお金相談室 代表)

SNSで、万代にある天ぷら屋さんにランチを食べに行ったという、13年前の投稿が流れてきました。

「そういえば、あのお店おいしかったなあ」なんて思いながら写真を見返すと、天丼が880円と表示されていました。

「あのクオリティの天丼が880円!?今じゃあり得ない…」と現在の価格を調べてみたら、1540円でした。

その価格でさえも「妥当だよね、むしろ安い」と思う自分がいるのです。

何気ない価格の変化ですが、これはまさに「インフレ(物価上昇)」の実例です。

最近はどこに行っても、あらゆるモノの値段が上がっています。外食も、食品も、日用品も、電気代も、車も…そして住宅価格まで。

インフレはもはや、私たちの生活とは切り離せない存在です。

でもこの「インフレ」、実は怖いだけの存在ではありません。

正しく理解し、行動すれば味方にもなるのです。

特に「これから家を買おう!」と思っている方にとっては、インフレの本質を理解することがとても重要。

なぜなら、住宅という「モノ」を買うことが、有効なインフレ対策になるからです。

天丼が教えてくれる「お金の価値が目減りする現実」

13年前に880円だった天丼が、今は1540円。

これは単に「材料費が上がった」だけの話ではありません。

同じ天丼を食べるのに必要な「お金の量」が増えたということ。

つまり、お金の価値が下がったということです。

簡単に上昇率を計算してみましょう。

• 13年前:880円
• 現在:1540円
• 上昇率:約75%

同じお金で買えるモノが少なくなっていく。これがインフレの正体です。

「家」も着実に値上がりしている

日用品や外食の値上げが続く中、このインフレの影響として 住宅価格も着実に高くなっています

15年前、私は自宅(延べ床約32坪)を約2000万円で建てました。

3社から見積もりをとった中で、最も気に入ったプランで最も高い見積もりの会社に依頼した金額です。

今では、全く同じような家を建てようとすると、だいたい3000万円はかかるでしょう。

その上、断熱性能を今の基準に合わせれば、3300万円以上確実にかかります。

なぜこんなことが起きているのでしょう? 住宅価格を押し上げているのは、以下のような構造的な要因があるからです。

• 木材や、設備など建材価格の高騰
• 人件費の上昇
• エネルギーコストの増加
• 断熱や耐震基準の強化に付随した性能アップ

つまり、住宅の価格も天丼に近いような上昇率で、確実にインフレしているのです。

インフレ時代にお金を「モノ」に替えて守るという考え方

インフレ時代にお金を「預貯金」のまま持ち続けるのは、価値の減少に耐え続けるということになります。

金利が少し上がってきたとはいえ普通預金に預けていても、年2~3%物価が上がれば、実質的には損をしていることになります。

今やお金をそのまま預けておくのは、イメージとしては氷を冷凍庫に入れているつもりでも、外気温が強すぎてジワジワ溶けていくような状態。時間の経過とともに溶けていく氷をただ眺めているようなものです。

だからこそ 「必要なモノを先に買っておく」 という選択が、お金の価値を守る行動につながります。

その代表的な例が、住宅や車などの購入です。

・生活に必ず必要なモノ
・インフレに連動して価格が上昇する
・固定金利でローンを組めば、支払い額は一定のまま

これらの理由から、住宅は「インフレに強い資産」といわれているのです。

住宅購入がなぜインフレ対策になるのか?

なぜ「住宅を買っておくこと」がインフレ対策になるのかを、より詳しく見ていきましょう。

①将来の値上がりリスクを回避できる

10年前に2000万円だった家は、今は3000万円かかるとお伝えしました。

ならば今、3000万円で建てられる家はさらに価格が上がり、5年後には3300万円になっている可能性も。

むしろ、人件費の転嫁がこれから本格的になることを考えると、その可能性は十分にあり得ます

建築費は、材料費・人件費・物流費などの影響を受けやすいです。

特に人件費が多大なため、インフレが落ち着いたとしても簡単には値下げされません。

つまり、「今買う」のと「後で買う」では、必要なお金がまったく変わってくるのです。

私自身の経験で、15年で約1000~1500万円の差が生まれていました。

常に“今”の価格で購入することで、将来の家の値段上昇リスクを回避できるのです。

②固定金利ローンで支払い額を一定に保ち、インフレの影響を受けにくくする

例えば3000万円を金利1.5%・35年ローンで借りた場合、月々約9万円の返済額です。

これを固定金利で契約すれば、未来のインフレで物価がどれだけ上がっても返済額は変わりません。

つまり、「将来のお金の価値が下がる」ことで、ローンの重みが実質的に軽くなるのです。

今はまだ固定金利も抑えられています。

個人的には、いまは金利がまだ許容できる範囲にあるからこそ、固定でローンを組む購入に向けたいい機会だと考えています。

インフレ時代には「お金をどう使うか」が問われている

天丼が13年で75%も値上がりする時代です。

私たちは今、お金の価値がどんどん目減りしていく時代にいます。

親世代が経験してきた「貯金すれば安心」というデフレの時代は、既に終わりを迎えました。

今は「お金をどう使うか」「どう守るか」が問われる時代です。

経済の専門家である場合を除き、親に相談しても最適なアドバイスを得るのは難しいのです。

むしろ、自分たちの実体験を基にした最高の解決策とは逆のアドバイスをもらうケースが考えられるでしょう。

これから家を買おうとしている人にとって、住宅は単なる「住まい」ではなく、お金を守る手段にもなり得ます。

世界的に見ても、インフレの進んだ国では一般家庭が住宅を所有できない時代が既に到来しています。

海外の知人から聞いた話でもそうですし、YouTubeでも実態が報告されています。

それなら賃貸にすれば大丈夫、ということではありません。

賃貸の家賃も高騰し、家賃が手取り収入の50%以上を占めてしまうような国も少なくないからです。

このような状況は、行き過ぎた資本主義の結果であり一部のお金持ちが力を持ちすぎると起こってしまう現象です。

日本も今後、同じような方向に向かっていく可能性は十分にあります。

もちろん、住宅購入がすべての人にベストな選択とは限りません

もちろん焦って買う必要はありません。

ですが、必要なタイミングが近づいている方にとっては、「今は高いから…」と様子を見るよりも、行動に移す価値がある時代が来ていることを知っておくことは無駄にはなりません。

ここまで読んでくださったあなたは、「早くマイホームを」と思うかもしれません。しかし一呼吸置いてください。

当然ながら、全員が全員、住宅購入が正解というわけではありません

• 収入やライフプランに見合わない住宅購入は、生活そのものを圧迫します

• 将来的に価値の下がりやすい立地や物件を選ぶと、資産価値も売却も期待できません

• 住宅は希望値の売却が難しく、中古住宅は新築ローコスト住宅や建売住宅がライバルになりやすいため、思ったよりも値がつきません。

特に注文住宅にこだわるほど売る時の値段は新築時と大きく開いてしまいます。新築より市場競争力が低下しがちです。

つまり、買う前の資金計画とライフプランが非常に重要なのです。

 

<無理のない資金計画を!>

 

~新潟住まいのお金相談室ブログ「15年で1000万円差?住宅価格の高騰と“買い時”の見極め方」より〜