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【変動か固定か】住宅ローン金利は今後どうなる?FPがわかりやすく解説

昆知宏(新潟住まいのお金相談室 代表)

住宅を購入しようと考えた時、多くの人が悩むことがあります。

それは、住宅ローンを変動金利にするか固定金利にするか、という選択です。

これまで約20年、日本では超低金利が続いていました。このため多くの借り手が特に悩まなくても、変動金利を選んできたのです。

実際、昨年のデータによると、住宅ローンを組む人の8割以上が変動金利を選択しているという結果が公表されています。

借入金利は0.5%前後。

この数字は、世界的に見ても極めて特別な低金利の状況でした。

最近、その状況が変わりつつあります。

例えば、金利比較サイト「モゲチェック」を運営するMFSの予測では、2026年末までに住宅ローンの変動金利が約1%上昇する可能性があると指摘しています。

仮にそうなると、以下の水準に近づくと予想されます。

• ネット銀行の最安水準:現在の0.5%台 → 2026年には1.50%前後
• 地方銀行の金利:現在の0.8〜1.0%台 → 2026年には1.8%前後

本記事では、金利が上がる理由や、今後の住宅ローン市場の動向について解説します。

金利は本当に上がるの? 住宅ローン市場のこれから

なぜ金利が上がるのでしょうか。

これまで日本では、物価も給料もほとんど上がらなかったため、金利を上げる必要がありませんでした。

しかし、最近になって政府が主導し、半ば強制的に企業の賃金をアップする動きが進んでいます。

物価と賃金が上昇すれば、日銀が段階的に金利を引き上げていくのは自然な流れです。

だから、その方向に持っていきたいというのが基本シナリオ。これは、社会の教科書通りの動きと言えるでしょう。

ただし、金利は教科書通り「上がる」だけではなく、世界情勢からも大きく影響を受けます。

例えば、米国のトランプ大統領による「高関税政策」が継続されれば、世界の貿易には先行きの不透明感が広がります。

その結果、景気が落ち込み、日本でも急な金利上昇を避けざるを得ない可能性もあります。

「金利は上がる」とFPが予想する理由

私も個人的に金利は上がると思います。

なぜなら

・物価上昇は現在も進行中
・最低賃金がこれまでにないほど、大幅に引き上げられていること

この2点から見ても、確実に実行される気配だからです。

さらに、実際に株式市場では銀行株や保険株が大幅に値上がりしています。投資家は既に金利上昇を”織り込み済み“なのです。

”織り込み済み“とはどういうことかというと、投資家にとっての認識は「もう金利は上がった後」の株価になっているということです。

このシグナルはここ数年顕著に見られていました。

1~2年前くらいから投資の雑談になった時には、「今は銀行株を買うのが正解」と私は口癖のように言っていました(笑)。

その銀行株は、まだ上昇を目指しています。

だから、市場は確実に現在の基準以上の金利上昇を織り込み始めていると考えているわけです。

金利上昇が与えるローン支払額への大きな影響

この変化が、私たちの日常生活に与える影響も無視できません。

例えば、普通預金や定期預金の利息は増え始めてきました。

預金が多い人ほど、最近付いた利息に驚いたかもしれません。

また、これまであまり期待できなかった学資保険や個人年金保険の利回りも、改善しつつあります。

「今まででは考えられないくらい利息がつく」と感じる日もそう遠くないかもしれません。

つまり、これから住宅ローンを組んで家を建てようとしている人にとっては、「金利の選択がこれまで以上に家計に大きな影響を与える時代」になってきているのです。

支払う利息額が今までよりも数百万円~1千万円以上になるのが普通になる、ということです。

この変化は当然ながら家計に与える影響が大きいのです。

変動金利を選ぶとどうなる?メリットと注意点

では、住宅ローンを変動金利にするか、固定金利にするか、あらためて考えましょう。

まずは変動金利について。

変動金利の最大の魅力は、スタート時の金利が低いことです。

例えば、新潟県の代表的な地方銀行「第四北越銀行」では、変動金利が現在0.8%前後(2025年9月時点)と設定されています。

この水準はネット銀行に最近は見劣りせず、地方銀行もネット銀行との金利競争に参入しています。

さらに地方銀行の場合は、金利だけでなく諸費用や事務手数料で有利になる場合もあります。

ネット銀行は確かに低金利が魅力ですが、保証会社に支払う保証料や融資実行のスタイル、団体信用生命保険(死亡したら残額免除の保険)の条件などを考えると、全体的には地銀のほうが有利というケースも今年見られるようになりました。

変動金利の注意点

ただし、変動金利には大きなリスクもあります。

それは変動金利は、将来的に金利が上がった場合、返済額も上がるという点です。

金利は自分ではコントロールできないので、家計に負担がのしかかるリスクを抱えなければなりません。

例えば、3,000万円を35年ローンで借り入れた場合、金利が0.5%から1.5%に上がると、総返済額に数百万円もの差が生じます。

このように、最初は「安い!」と感じても、将来、金利が上がれば返済のため、家計の負担がふくらむ可能性があります。

特にネット銀行は市場動向に敏感で、金利が上がれば素早く対応します。

今は「ネット銀行が一番安い」と言われていますが、その低金利がずっと続く保証はないのです。

さらに知っておきたいのが、銀行の商習慣です。

銀行は「新しく借りる人」には非常に良い条件を提示しますが、「すでに借りている人」に対しては、わざわざ金利を下げるような優遇は基本的には行いません。

なので、一度契約してしまうと、利上げの影響をそのまま受けやすいのです。

つまり変動金利は、

「短期的な返済負担を減らしたい人」
「将来の収入に余裕があり、上昇リスクを負える人」

に向いていると言えるでしょう。

固定金利は安心感が魅力ー「フラット35」の使い方

次に固定金利についてです。

固定金利の最大の利点は、契約時点で返済額が確定する安心感です。

将来の金利の動向に関わらず、借り入れた時の条件のまま一定額を払い続けるので、家計の展望が立てやすくなります。

「返済額が増えるのは怖い」と感じる人にとっては大きなメリットです。

ただし、現在の固定金利は、ネット銀行では既にかなり上昇しており、割高感があります。

地方銀行ではそもそも商品としてラインナップがありません。

事実上の選択肢は「フラット35」になるケースが多いです。

フラット35のメリット

「フラット35」という商品は、住宅金融支援機構と民間銀行が提携して提供する長期固定型ローンです。

省エネ住宅や子育て世帯などに対しては「金利優遇」があり、これを使えば 最初の5年間は変動金利並みの水準 で借りることも可能です。

例えば、今ではもう当たり前になってきている「省エネZEH水準以上かつ、39歳以下の若年層夫婦または子どもがいれば最初の5年は1.0%の割引」があり、5年間は変動金利並みで借りられます

6年目以降は、本来の金利に戻り今のレートだと1.7~2.0%前後になるといった仕組みです。

この場合、もし将来的に変動金利が1.7〜2.0%に達していれば、固定金利を選んだ人にとってはそれ以上に上がる恐怖はありません。

固定金利は「安心かつ結果的にお得」ということになります。

固定金利のデメリット

もちろんデメリットもあります。

もし将来、変動金利が思ったほど上がらず1.0%前後のまま移行した場合、固定金利を選んだ人は「割高な返済を続ける」ことになります。

でも正解は、将来どうなるか分からないので、ありません。

ここで、固定金利は「金利上昇リスクに対する保険料」と考えると、分かりやすいでしょう。

その保険料を支払うことに納得できるか、保険料に見なす安心をあなたが得られているのかがポイントになります。

あなたに合った住宅ローンの選択をー変動か固定か

結局のところ、変動金利と固定金利のどちらを選ぶのが正解なのでしょうか?

FPとして本当によくこの質問を受けますが、大前提として、将来の金利が分からないので損得を断言することはできません

ですが、指標とする考え方はあります。

ライフスタイルで考える

「自分のライフプランに合っているかどうか」が大切です。

金利の将来を正確に予測することは誰にもできませんから、収入や家計の状況に合わせて選ぶことが重要です。

• 共働きで収入が安定している家庭
 → 変動金利を選び、浮いた返済額を貯蓄や投資に回す

• 共働きだか一方がパートなどで収入が少なめか不安定、かつ教育費や将来の出費が大きくなりそうな家庭
 → 固定金利を選び、返済額が増えない安心感を確保

基本的な回答をFPとして言うと、上記のようになります。

実際の金利選択は逆になりがち

シミュレーションをしてみて、変動でも固定でも、余裕があるならどちらでもいいと思います。

ですが、シミュレーションの結果、家計に余裕がなさそうな場合は、変動金利を選択した場合には金利上昇が家計を破壊する引き金になりかねません。その場合は固定金利を私はお勧めします。

しかし、現実は逆になりがちです。

家計に余裕があり、変動金利でいいのではないかと思う方ほど、固定金利を好まれます。

家計にあまり余裕がなくて、金利が上がるとかなり苦しそうな方ほど、変動金利を好まれます。

考えてみればその行動原理は納得です。

家計に余裕がある人は当然ながら世帯年収が高い傾向にあります。だからこそ計画的に貯蓄を積み上げることができたわけです。

そのようなしっかり者の方は、金利上昇によって資産を減らすことや貯蓄できないことを避け、固定金利を選ぶことが多いです。

つまり自分ではコントロールできない負債を家計に入れることを嫌い、住宅ローンを組んでも安定的に貯蓄を増やしていきたいという考え=外的要因の負の要素を排除したいのです。

一方で、家計に余裕がない方の場合、最初の返済額が1万円でも安い方を好まれます。

これも当然の心理です。今の家計に余裕があるわけではないため、とにかく金利が上がらず最安になる可能性に賭けます。

もちろんその賭けが成功すればベストな選択になるわけですが、読みを外した場合、家計に与える影響は大きく、住宅購入が家計のストレスになる可能性が高くなります。

変動金利が上がった場合、住宅ローンが返せないほど行き詰まることはあまりないと思います。

ですが、

・旅行に行けなくなる
・自分たちの小遣いを減らす
・子どもの進学や習い事に制限をかける

このようにリアルに辛い選択肢を迫られることになるでしょう。それは嫌ですよね。

今の家計の余裕がない方ほど、固定金利の返済額で試算して、無理のない購入予算を徹底するべきです。

住宅ローンは超長期の借金ー10年、20年、30年後も考えよう

いかがでしたでしょうか。

住宅ローンは「お金の計算」だけでなく、「心理的な安心感」も重要です。

夜眠るときに「金利が上がったらどうしよう…」と心配になる。

そんなストレスを抱えるようなら、多少割高でも固定を選んだ方が生活の満足度は高いかもしれません。

現在、賃上げの波に乗り切って、この先10年、20年も年収アップが確実に読める方は、少しでも利息負担が低い可能性に賭けて変動金利を選択しても良いでしょう。

大事なのは目先ではなく、よく見えない10年、20年、30年先をイメージすることです。

✅ まとめると…

・金利は今後、じわじわ上昇していく見通し

・ 変動金利は最初の安さが魅力だが、将来の上昇リスクを自分で負う必要がある

・固定金利は安心感があるが、割高になる可能性もある

・正解は「自分の価値観と家族のライフプランに合った選択」

このように考えれば、正解のない損得で永遠に悩む必要がなくなります。

しっかり納得した上で、金利選択ができるようになるのではないでしょうか。

 

<無理のない資金計画を!>

 

~新潟住まいのお金相談室ブログ「住宅ローン金利はどう選ぶ? ― 変動か固定かをわかりやすく解説」より〜