すまい

後悔ゼロ!新潟の家づくりはファイナンシャル・ウェルビーイングから始めよう

昆知宏(新潟住まいのお金相談室 代表)

先日参加した勉強会で、興味深いテーマがありました。

それは、「ファイナンシャル・ウェルビーイング(Financial Well-being)」

聞きなれない言葉ですが、お金の不安から解放され、安心して人生を豊かに暮らせる状態を指します。

単に資産を増やそう!お金持ちになろう!とは少し違う思想です。

これは家づくりにおいて「無理せず返せる住宅ローンを組む」という日頃お伝えしている考えと深くつながる、とても大切な考えです。

そのため、今日は「ファイナンシャル・ウェルビーイング」について、シェアしたいと思います。

家を建てる時のお金の不安の正体

新潟でこれから家を建てたり買ったりするご家族がよく抱える心配は、以下のような“お金の不安”です。

・「金利が上がっている中で、今の年収で返していけるのか?」
・「光熱費や車の維持費がかさむから生活が圧迫されないか不安だ…」
・「雪国だから、性能は欠かせない? 屋根や外壁のメンテナンス費用が読めない…」
・「子どもの教育費と住宅費、どちらを優先すればいいのか?」

家づくりが進むと、つい「ローンの審査が通るか」と合否に焦点が当たりがちです。

しかし、家づくりで本当に大事なのはその前の段階。

ローンを組めるかどうかではなく、家を建てた後も安心して暮らせる状態の予算かどうかです。

これを解決するのがファイナンシャル・ウェルビーイング(FWB)です。

お金の知識があり、計画的に資金管理をするほど、FWBは向上し、お金に苦しまない人生を送れる。

これはただの理想でなく、正しい知識と行動があれば、実現可能なことです。

そのために、私たちファイナンシャルプランナー(FP)が相談者さんにできることについて勉強してきた点をまとめてみます。

ファイナンシャル・ウェルビーイングとは?

簡潔に言えば、「今も将来も、お金について安心して暮らせる状態」です。

ファイナンシャル・ウェルビーイング(※以下FWB)を実現するためには、次の4つの柱を成立させることが大切です。

FWBを支える4つの柱

①支出管理
毎月の家計をムリなく回せること。
毎月「かろうじて赤字を免れた…」ではなく、無理なく黒字で運営できる状態が大切です。

➁ ショック対応
急な出費や収入減に対応できる蓄えがあること。
「何かあったらどうしよう。」多くの人のお金に対する恐怖の源はこれです。なので休職や事故・病気、冠婚葬祭などに対応する家計の蓄えを持つと、不安の多くを取り除けます。

➂ 選択肢
旅行、教育、働き方など、家以外でやりたいこともできること。
生活を回すだけ、ではなく余暇の過ごし方や働き方、学び方を選べる状態。家計が健康かは、個人の幸福度に直結する大事なポイントでもあります。

④ 将来の見通し
住宅ローン、教育費、老後資金を数字で把握できていること。
月単位、年単位で赤字になっても、あらかじめ支出が多い年を把握して、予定通りであれば問題ありません。“見える化”が安心の基礎です。

…あなたもお金に対して不安な点は多くありませんか?

上記に挙げた①~④のどれか一つでも欠けている場合は、お金の不安がずっと付きまとうことになります。

一方で、これらを把握・管理・掌握すればお金の不安が軽減し、FWBを実現できるとも言えるのです。

新潟は固定費が高い? 家計の負荷をFWB視点で押さえよう

実は新潟では、他県と比べ家計の「固定費」が高くなりやすい地域特性があります。

その理由を押さえてみましょう。

1)光熱費が高い

新潟は、高温多湿で夏の冷房費や、積雪地域のため冬の暖房費・灯油代は全国でもトップクラスです。
住宅性能や暖房方式をどう選ぶかで、ランニングコストは大きく変わります。

例えば、築年数の経った中古住宅で延床面積の広い家を買うと、価格が安くお得に見えても、光熱費が住宅ローンの返済額に匹敵する場合が想定されます。

家の価格を安くして家計に余裕を作ろう、という考え方には注意が必要です。

光熱費は今とても上がっています。生活費を考える上で、しっかり試算をしていただきたいです。

2)車が必須で、標準が2台持ち

新潟は車社会で、1人1台が当たり前という地域も多いです。
自動車ローン・ガソリン代・車検・タイヤ交換などが、住宅費と同時進行で家計を圧迫しやすい項目となります。

都心ほど不動産価格は高くなくても、自動車購入・維持コストはズッシリとした支出となります。

その上、自動車の本体価格も、物価上昇で大変なことになってきていますよね。

3)雪によるメンテナンス費の増加

屋根・外壁・排雪設備など、家を建てた後のメンテナンス費用は“隠れコスト”になりがちです。
新潟市はそれほどでもありませんが、多雪地域では初期コストも、メンテナンス費も共に上がってきます。

4)土地価格の差が大きい

新潟市中心部と郊外で土地価格が大きく変わるため、どの土地を選ぶか、とライフプランが直に結び付きます。
最近は建物の高騰が止まりません。全体の価格を抑えるため、郊外に家を建てる方が増えてきている印象を受けます。

車通勤であれば確かに無理して利便性の高いエリアにこだわる必要はなく、家計のそのほかの項目に余裕を作った方が良いという方針かと思います。

新潟では住宅ローン以外にも、全国平均よりも、かかるお金が高めです。

新潟で家を建てるなら、FWB=お金の安心感 を先に整えることが欠かせません。

新潟で家を建てる人がFWBを高めるための4ステップ

新潟の住宅を購入する方がFWBを高めるには、4つのステップで家計をチェックすることが大切です。

4つのステップは以下の通りです。

STEP1:支出を管理する
STEP2:資金ショックに備える
STEP3:人生の選択肢を増やす
STEP4:将来の見通しを立てる

順を追って見ていきましょう。

STEP 1:支出を管理する

まずはここから。「家を買っても、生活が無理なく続くか」を確認するため、最低限チェックしたい5つのポイントを挙げます。

① 住宅ローン返済比率(現実的なのは手取りの20%台)

返済比率とは、年収に対しての住宅ローンの年間返済額の割合のことをいいます。

年収の20%が住宅ローンであれば、80%はそれ以外の支出に使える、ということになります。

住宅ローン比率比率は手取りの20%台が現実的です。額面で借りられる金額と、暮らしに余裕がある借り方は違います。

銀行の審査で額面30~35%まで借り入れできることが多いですが、手取りで見ると40~50%ほどになってしまい生活に余裕が出にくく、FWBは遠のくことになります。

② 車の買い替えサイクルの最適化

今の車はメンテナンスすれば、長く使えます。

購入時にはしっかりとした車両を選び、10年以上乗ることが1年あたりの所有コストをベストな状態にできます。

また、知識が必要にはなりますが、リセールバリューの高い車を3~5年で乗り換えていく方法も、1年あたりの所有コストを下げることができます。

わが家では、車は安全に乗れればOK派の妻は前者、車が好きな私は、後者の方法で乗り換え周期を回しています。

③ 冬の暖房費(光熱費)

寒いのに我慢するのはしんどいですし、健康問題にもつながります。

これから家を買う予定の方は住宅ローン返済額以外にも、光熱費のコスト計算も考えてみてください。

前述の通り、10年以上前の家では、床暖房などを使って家全体を温めると、電気代が5万円以上かかるという話はザラにあります。高額になりがちです。

住宅性能の差によって、光熱費の差は思った以上にあります。

④ 固定資産税

住宅を購入すると土地と建物に税金が課せらせます。月換算でも一定の負担になります。

価値に比例しますが、目安として月1万円程度を見込んでおきましょう。

⑤ 家電や設備のメンテナンス費

そもそも給湯器やエアコン・食器洗い器などの電化製品はおおむね10年程度で壊れます。
入れ替える費用としては、実質、月々1万円程度かかる前提でいれば間違いないでしょう。

FWBを考えると、住宅ローン以外にかかるコストにも目を向けて判断するのが適切でしょう。

STEP2:資金ショックに備える

「頭金を入れすぎて貯金ゼロ」は最も危険です!何かあった時に頼れるお金が無ければ、新たな借り入れをすることになり、FWBから遠ざかります。

お金の不安の根源は、緊急事態が起きたときの恐怖にあります。具体的なリスクの例としては、
・病気で一時的に働けない
・自然災害で被災した
・車が壊れた
・子どもの進学先が想定外のところになった(自宅外・私立・美術系・医学系など)
・想定よりも子宝に恵まれた
・転職したくなった
・失業した
・・・などが想定されます。

あなたの家計においての危機「〇〇ショック」を解決するためには、現金もしくは金融資産を持つしかありません。この現金を「生活防衛資金」と呼びます。

生活防衛資金は生活費半年~1年分持っておきたい

・生活防衛資金:生活費6カ月〜1年分(25万円/月だとすれば、150~300万円)

これくらいの現金を持ち続けられるように管理をしておくことが大事です。

この額が大きければ大きくなるほど、比例してFWBは向上するそうです。
生活防衛資金が300万円を超えたあたりから、一定の安心感が得られてきます。

ですが、「300万を超えたからもう安心。」というわけではありません。老後の生活を思うと、300万では心理的安心感は薄いですよね。

「老後まで見通した生活防衛資金」というと、この額が3000万を超えてくると、かなりの心理的安心感を得られるそうです。

長期的には、老後の資産として3,000万円以上を達成できるようにライフプランを組みたいところです。

今はそんなにお金がないとしても、その積み上げ実績(毎年の収支がプラスになることが大事)で着実にFWBを積み上げることができます。

生活防衛資金が精神衛生上、健全な状態をつくれることは間違いありません。

一方で手元に資金がない場合は、借金を重ねるしかなくなります。FWBとは逆方向にジェットエンジンで進んでしまうようなものです。

簡単に解決できる解決策ほど、注意しないといけません。

STEP 3:人生の選択肢を増やす

• 子どもの教育費
• 中学・高校・大学の進学
• 旅行
• 趣味
家を買うことで、教育、旅行や趣味などの選択肢が削られてしまう人は少なくありません。

住宅購入がきっかけで上記が犠牲になると、生活が窮屈になりFWBは低下するので避けたいところです。

住宅ローンや住宅維持費以外にも家計の余白を残しておくことが、あなた自身・あなたの家族の選択肢を広げることになります。

そして選択肢が人生で多ければ、幸福度は高まります。

“家のために人生をあきらめない”ための設計。これがFWBの本質です。

今、住宅は物価高騰の影響も受けさらに高額になっています。

「まあみんな高いから、仕方ないよね。買っちゃおう。」という考えで契約してしまうと、近い将来FWBの低下を招き、後戻りできない後悔を生む可能性があります。

STEP 4:将来の見通しを立てる

• 子どもが独立するまでの家計
• 教育費のピーク
• 車を買い替えるスケジュール
• 老後の資金
• 年金額の見通し
• 退職金の有無
これらを数字にすることで、住宅の購入予算は自然に決まってきます。

つまり、新潟における「家の買い時・大きさ・性能」はライフプランから逆算できるのです。

予算が分からないままとりあえず住宅会社を回るのは、最も失敗しやすい行動です。

今、物価高騰で家は売れづらいです。

住宅会社は、あの手この手であなたに購入を迫ってきます。相手はプロです。そして、あなたもそもそも家が欲しい。そうなれば、欲しいものを買ってしまうのは自然な流れですよね。

新潟で家を買う人が取るべき順番はこれ

住宅会社の営業さんは家の話をします。
銀行は住宅ローンの話をします。

でも、あなたの人生全体のお金の話をしてくれる人は誰もいません

正直、住宅の営業担当者からしたら、その話には触れたくないのです。

踏み込んでしまうと、このご時世は必ず予算ダウンの流れになります。

ただでさえ、家が高価になっているのに、お客さんに予算を下げられてしまったら、自社の商品を提供することができなくなってしまいます。

住宅会社としては物価高騰で厳しい中、受注する必要があるし、営業担当者にも生活があります。
お客さんのことを考えてしっかりライフプランの話をしたら「もっと安いところで建てようと思います!教えていただいて本当にありがとうございました」で終わる可能性も...。売り上げにならないリスクがあります。

銀行は、最近は40年超のローンを発明しましたから、毎月の返済額については何とかお茶を濁すことができるようになりました。

しかし、あなたの年齢+40年で、本当に返せますか?いつまで働きますか?あてにしている退職金は絶対にでますか?

こういう不確定要素の不安の積み重ねが、FWBを遠ざけてしまいます。

だからこそ、取るべき順番が大切です。ライフプランに沿ったお金の準備を優先しましょう。

ダメな順番(NG)

住宅会社で見積もり→ローンの事前審査→最後に家計の不安に気づく(もし契約後であれば、もう遅いです)

正しい順番(OK)

ライフプランで一生のお金を見える化→住宅の予算を決める→住宅会社を比較する→ローン選びに入る

この順番なら、家を買った後も安心して暮らせます。シンプルですが、この基本ができている人は、ほとんどいません。

ファイナンシャル・ウェルビーイングを手に入れたいなら

毎月、いくらの返済なら安全だと思えるでしょうか。

• 教育費がピークの時に、家計はどうなるか?
• 車2台を維持する時期でも、家計は赤字にならないか?
• 暖房費・メンテナンス費を含めても、住宅ローンを返せるか?
• 老後資金はどこで準備していくか?

以上をすべてを見える化できれば、あなたもきっとFWBに近づけるようになるでしょう。

住宅購入は、無理のない予算設定が何より大事です。

これから住宅を購入する人は、絶対にこのことを忘れないようにしましょう。

 

<無理のない資金計画を!>


 

~新潟住まいのお金相談室ブログ「失敗や後悔しない家づくりはファイナンシャル・ウェルビーイングから始まる|新潟の家づくり」より〜