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長期優良住宅とは?メリット・デメリット、認定基準について解説

新潟日報sumica編集部

住まいの性能や快適さを追求する中で、近年注目されているのが「長期優良住宅」です。

長く快適に住み続けられる家を目指して定められた長期優良住宅は、耐久性や省エネ性能、維持管理のしやすさなど、さまざまな観点から基準が設けられています。

しかし、「住宅メーカーのサイトなどで目にしたことがあるけど、内容はよく分からない」という方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、以下の流れで長期優良住宅の基本的な概要や認定を受けるメリット、注意点について分かりやすく解説します。

  • 長期優良住宅とは
  • 長期優良住宅の8つの認定基準
  • 長期優良住宅のメリット・デメリット

新築を検討中の方には必ず参考になる内容になっていますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

長期優良住宅とは

LOCAL LIFE STANDARD/(株)池田組「日常を満喫する二世帯の住まい」より

「長期優良住宅」とは、その名の通り、長期間にわたって良好な状態を保ちながら快適に住み続けられる住宅のことを指します。

2009年に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づき、一定の基準を満たす住宅に対して国が認定を行う制度です。

参照:長期優良住宅の普及の促進に関する法律 | e-Gov 法令検索

耐久性や省エネルギー性能、メンテナンスのしやすさなどを重視し、持続可能な社会の実現を目指して作られました。

具体的には、以下のような基準が設けられています。

  1. 耐久性・耐震性:地震に強い構造であることや、劣化対策が施されていること。
  2. 省エネルギー性:断熱性能が高く、省エネルギー対策が十分であること。
  3. 維持管理の容易性:配管や設備がメンテナンスしやすい設計であること。
  4. 居住環境の保全:良好な住環境を保つための計画が考慮されていること。

認定を受けることで、住宅ローン減税や固定資産税の減額などの税制優遇を受けられるほか、資産価値が高まりやすいというメリットもあります。

また、長期的に修繕費やエネルギーコストが抑えられるため、家計にも優しい選択といえるでしょう。

長期優良住宅は、快適に過ごせるだけでなく、環境にも配慮した住まいの在り方を実現する制度として、多くの注目を集めています。

長期優良住宅の8つの認定基準

(株)新潟ヒロタカデザイン事務所「本物のデザインは、愛される」より

長期優良住宅の認定を受けるには、国が定めた基準を満たす必要があります。

この基準は、住宅が長く良好な状態を保ちながら快適に暮らせるようさまざまな観点から設定されています。

以下は主な認定基準です。

1. 劣化対策

「長期優良」と付くように、住宅の耐久性を高めるための対策が求められます。

具体的には、構造の劣化を防ぐ材料や施工方法を採用し、数世代に渡って構造躯体が使用できる耐用年数が確保される(床下空間330mm以上確保、劣化対策等級3相当)設計であることが必要です。

2. 耐震性

一定の地震に耐えられる構造であることが求められます。

住宅品質確保促進法(品確法)に定める免震建築物に該当すること、または住宅の構造などによって耐震等級1〜3(倒壊等防止)に該当する住宅であることが基準となります。

耐震等級については以下の記事でも解説していますので、併せてお読みください。

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【耐震等級を知ろう】地震・災害に強い家を作るには?

3. 維持管理・更新の容易性

耐用年数が短い給排水管などの設備が点検・交換しやすいように設計されていることが必要です。

新築戸建て住宅の場合、維持管理対策等級(専用配管)で等級3を取得する必要があります。

4. 省エネルギー性能

断熱性能や省エネ設備の導入により、エネルギー効率が高い住宅であることが求められます。

断熱等級は5(ZEH相当)、維持管理対策等級は6を取得する必要があります。

5. 居住環境

性能だけでなく、景観や住居環境の維持向上にも基準が設けられています。

地区計画、景観計画、条例によるまちなみ等の計画、建築協定、景観協定等の区域内にある場合には、これらの内容と調和を図った設計をする必要があります。

6. 住宅面積の基準

居住空間として十分な広さが確保されていることが求められます。

一戸建て住宅の場合は住宅面積が75㎡以上かつ階段部分を除いて1階の床面積が40㎡以上であることが求められます。

7. 維持保全計画

定期的な点検や修繕を計画的に行うための「維持保全計画」を作成し、住宅の性能を長期間維持することが必要です。

8. 災害対策

自然災害の危険性がある地域では、その危険性の高さに応じた措置を講じなければなりません。

措置の度合いについては、長期優良住宅を申請する所管行政庁が定めています。

長期優良住宅のメリット・デメリット

(株)坂詰製材所「長岡モデルハウス」より

長期優良住宅は、住環境や省エネ性能などに優れ、多くのメリットがありますが、コストや手間といった注意すべきデメリットも存在します。
以下はメリット・デメリットの一覧です。

メリット
  • 税制の特例措置が受けられる
  • 地震保険料の割引がある
  • 住宅ローンの金利が優遇される
  • 地域型住宅グリーン化事業の補助金が受けられる
デメリット
  • 通常の住宅より建築に時間がかかる
  • 建築コストが高くなる
  • 長期優良住宅の申請費用が必要
  • 定期点検が欠かせない

ここからは、それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。

長期優良住宅のメリット①税制の特例措置が受けられる

長期優良住宅のメリット1つ目は、「税制の特例措置が受けられる」ことです。

2025年1月現在では、主に以下のような税制上のメリットがあります。

  • 登録免許税が安くなる
    住宅ローンを利用して長期優良住宅を取得する場合、登録免許税が通常よりも軽減されます。
  • 不動産取得税が減税される
    住宅の購入時に課せられる不動産取得税の控除額が大きくなるため、初期コストを抑えられます。
  • 固定資産税の減税期間が延長される
    新築住宅の固定資産税軽減期間が通常よりも延長され、負担軽減が長期間続きます。

長期優良住宅のメリット②地震保険料の割引がある

長期優良住宅のメリット2つ目は、「地震保険料の割引がある」ことです。

耐震等級割引、または免震建築物割引のどれかに該当する場合、地震保険料が割引される場合があります。

耐震等級割引に関しては、取得する等級によって割引率が変動するのが一般的で、等級3ともなると50%もの割引が適用されることもあります。

割引の条件や内容は契約する保険会社によって変わるので、契約前によく確認しましょう。

長期優良住宅のメリット③住宅ローンの金利が優遇される

長期優良住宅のメリット3つ目は、「住宅ローンの金利が優遇される」ことです。

住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して貸し出す「フラット35」には、長期優良住宅であれば更に低金利となる「フラット35S」というプランがあります。

通常のフラット35の金利が1.73%なのに対し、フラット35Sであれば当初5年は金利1.23%、10年目までは1.48%と非常に低金利で借り入れることが可能です。

長期優良住宅のメリット④地域型住宅グリーン化事業の補助金が受けられる

長期優良住宅のメリット4つ目は、「地域型住宅グリーン化事業の補助金が受けられる」ことです。

地域型住宅グリーン化事業とは、平成27年度から始まった高品質な木造住宅を支援する事業です。

条件を満たした長期優良住宅であれば、長寿命型として最大135万円の補助金を受け取ることができる上、地元木材の使用などでさらに加算金が出る場合もあります。

長期優良住宅のデメリット①通常の住宅より建築に時間がかかる

長期優良住宅のデメリット1つ目は、「通常の住宅より建築に時間がかかる」ことです。

前述の通り、長期優良住宅の取得にはさまざまな条件や性能の基準があります。

認定基準を満たすために設計や計画の段階で詳細な検討が必要となるため、どうしても設計や施工には時間がかかるでしょう。

長期優良住宅のデメリット②建築コストが高くなる

長期優良住宅のデメリット2つ目は、「建築コストが高くなる」ことです。

高断熱・高気密、高い耐震等級などを実現するためには、どうしても高品質な材料や手間のかかる施工が必要になります。

そのため、一般的な住宅に比べて建築施工などの初期費用に関しては高くなってしまうでしょう。

長期優良住宅のデメリット③長期優良住宅の申請費用が必要

長期優良住宅のデメリット3つ目は、「長期優良住宅の申請費用が必要」ことです。

認定を受けるためには、申請に関わる費用が発生します。

費用は申請する自治体によっても変わりますが、住宅メーカーや工務店の申請代行費用も含めると20万円〜30万円ほどとなります。

長期優良住宅のデメリット④定期点検が欠かせない

長期優良住宅のデメリット4つ目は、「定期点検が欠かせない」ことです。

長期優良住宅は、維持保全計画に基づいた定期的な点検・メンテナンスの実施が義務付けられています。

点検費用の負担や、場合によっては修繕費がかかる点は注意が必要です。

まとめ

(株)スウェーデンハウス「ダイナミックな大屋根スタイル~Alm(アルム)~」より

今回は長期優良住宅について解説しました。

数多くの基準が設けられた長期優良住宅ですが、ハードルが高い分完成した住まいは素晴らしいものになるでしょう。

もちろん、理想だけでなく初期費用やランニングコストをしっかりと計算し、納得のいく家づくりにすることが大切です。

自身だけで判断するのが難しい場合は、ハウスメーカーや工務店といったすまいのパートナーに相談してみることをおすすめします。

なお、新潟日報が運営する当サイトsumica(すみか)では、新潟県内50社以上の住まいのパートナーを掲載しています。

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簡単な質問に答えていくだけでおすすめのビルダーを紹介する「すまいの相性診断テスト」もあるので、家づくりを相談するパートナー探しにぜひお役立てください。

(監修/(株)新潟家守舎)