すまい

美景の中で暮らす家

新潟日報sumica編集部

家にいながら散歩気分も楽しめる町に開かれた住まい

2棟の家を1、2階の通路がつないでいる

坂道から裏へ、町へ…
家の間を通る「道」が町と住まいをつなぐ

日本海からゆっくりと砂丘を上った頂きに、S氏邸は建っている。
それはまるで町を見渡す展望台のようにも見える。

坂を上りきった頂きにある家屋。二つの家の間を抜ける道が町とつながる。2階の窓からは日本海を眺められる

ユニークなのは、白い小さな家が2棟寄り添い、その間を通る「道」が、玄関を抜けてその奥の小道につながっていること。コンセプトは、町から家へ、家から町へと開かれた暮らし。「町の延長のようなところに家がある」という建築家の提案に、Sさん夫妻は心を躍らせたと振り返る。

小道から玄関へ、そして裏の道へと誘う土間空間はシンボルツリーが白い壁に映えて美しい。屋内のカーテンを閉め切るとプライベートガーデンになる

土地を決める際、解体前の家の2階に上がらせてもらったと言う。「周囲の樹木が美しいし、風が抜けてとても気持ちが良かった。日本海の眺めも素晴らしかった」「家は多いけれど、各家が木を植えていて圧迫感がない。路地が多いのも楽しい」とお二人。昔からあるこの町で、景色を楽しむ暮らしを始めることにした。

敷地内の小道から見たS氏邸

小道につながる玄関前の土間空間は、屋内のカーテンを閉め切るとプライベートガーデンになる。踊りが趣味という夫妻のために、ステージとベンチが設けられている。お子さんたちにとっては外遊びのできる楽しい場所だ。踊ったり走ったり…笑い声が絶えない。

玄関にはお子さんが描いた家屋の絵が飾られていた

二つの棟に分けたことで生まれたテレワークも快適な距離感

2階に並べて配置したLDKの、どこからも景色が眺められる。開放的な家が理想だったという奥さまは、家の中にいても外を感じられるのがうれしいと話す。

「ここから海が見えるんだよ!」とお子さんたちがお気に入りのリビングに案内してくれた。そしてご夫妻の落ち着く場所はキッチンとダイニング。木々の緑が窓の外に揺れている。お二人とも料理と食べることが大好きで、特にキッチンの使い勝手の良さにもこだわったという。

ご夫妻の身長に合わせた作業台や収納など、使い勝手抜群の造作キッチン

LDKのある棟と子ども室のある別棟とは、通路とテラスでつながっている。Sさんはテレワークの際、別棟2階のワークスペースに「出勤」。家族がほかの活動をしていても、ちょうど良い距離感が保たれ、ストレスを感じなかったという。

家族との距離感がちょうど良いワークスペース

 

お子さんのお昼寝にも使われる和室

大きな掃き出し窓から出入りするテラスは、アウトドアも楽しむご家族の憩いの場。風を感じながら、外ごはんを楽しむこともある。

和室とダイニングの間にあるテラス
二つの建物や1階・2階の行き来には、外を感じる「間」を通る

通り道のようなSさんの住まい。散歩の途中で遊んだりくつろいでいるような、おうち時間を垣間見させていただいた。

自転車が置ける土間が付いた子ども室
建築家と理想の家を語りあったメモノート

新潟市 S氏邸 House data

家族構成夫婦+子ども2人
敷地面積190.49m2(57.62坪)
延床面積108.6m2(32.85坪)/1階53.73m2(16.25坪)/2階54.87m2(16.60坪)
竣工年月2018年1月
工法木造軸組工法
基礎ベタ基礎
断熱材壁:ホームマットNEOt90/屋根:モコフォームA-3t160/床:アクリアUボードピンレスt80
外装仕上屋根:カラーGL鋼板t0.4竪ハゼ葺き/外壁:カラーGL鋼板t0.4竪ハゼ葺き
内装仕上床:楢複層フローリング/壁:珪藻土クロス張り/天井:珪藻土クロス張り
設備キッチン:造作キッチン+/造作キッチンカウンター/バス:TOTOユニットバスサザナ1616/トイレ:アラウーノSⅡ(Panasonic)
開口部窓:SAMOS ⅡH(リクシル)、エピソード(YKKAP)、木製建具/ドア:制作
取材協力Takeru Shoji Architects 東海林健建築設計事務所