【賢い選択は?】住宅ローンの早期返済と長期返済のメリット・デメリットを解説
あなたは住宅ローンについて、どのくらいの期間で返済するイメージがありますか?
多くの人が思い浮かべる数字はおそらく「35年」だと思います。
しかし、現代ではこの「基準」が変わりつつあります。
35年返済では今の時代には合わなくなり、別の方法で住宅ローンを返済する人が増えているようです。
住宅ローンは、いったいどのような理由で生まれたのでしょうか。
ここでは、住宅ローン誕生の歴史的な経緯について、説明していきます。
住宅ローン誕生のきっかけは、戦後の高度経済成長期までさかのぼります。
この時期は、住まい不足のため多くの人々が住宅を求め、家を購入する必要に迫られました。
当時の多くの家庭は、(今もですが)十分な頭金を用意することができないため、高額な住宅価格を一括で支払うことも難しい状態。
そのため、長期にわたるローンの需要が生まれるようになったのです。
こうして「住宅ローン」という、画期的な長期ローンの制度が普及していきました。
一括では支払えなくても、35年で分割して返済すれば、毎月の支払いは利息を含んでも無理なく行える範囲内です。
そして、60歳になった時には少し残っているローンを退職金で完済する。
この2点が「住宅ローン」の大前提でした。
例えば、32歳で家を建てた場合について考えてみましょう。
35年返済であれば67歳まで返済が続きます。しかし、28年目の60歳になったタイミングで退職金を使って、残りのローンを一括返済することが「一般的」だったのです。
このように高度経済成長期は、
✅年功序列の賃金
✅潤沢な退職金
が見込める状況だったので、35年返済の住宅ローンは時代に合った返済方法だったわけです。
従来の日本のシステムにマッチしていた「35年返済ローン」は、今の時代には合わなくなってきているようです。
高度経済成長でもなく、年功序列の賃金体系も崩れてきています。
さらには退職金のない企業も増えてきています。
確かに、当時とは家計状況が大きく変わっているため、35年返済が合わなくなるのは当然のことです。
このような背景から、住宅ローンの返済期間は大きく変化してきました。
現代では、住宅ローンの返済期間は以下のように二極化していると言われています※1。
1つ目のパターンは、比較的短い期間での住宅ローンです。
将来の金利上昇を想定し、長期での住宅ローンを組むことを嫌がる流れが起きているのです。
金利が上がる前に返済を完了したいので、10〜20年など比較的短い期間の住宅ローンを選ぶ世帯が増えています。
2つ目のパターンは、反対に超長期の住宅ローンです。
売り手側の「物件を少しでも安く見せたい」
買い手側の「毎月の支払い額を少しでも抑えたい」
という、それぞれのニーズが合致した結果、物件価格の上昇も相まって、35年以上の長期ローンを選ぶ人が増えているのです。
支払う総額が増えた分、支払いの分割回数を増やす(=支払い期間を延ばす)ことができれば、月々の負担自体は軽減されるという単純な計算です。
35年以上のローンを組む人の割合は過去3年間で倍増していると言われています。
住宅ローン金利における将来予測も、楽観的か悲観的かで人によって大きく二極化していることが分かります。
さらに、日本銀行がこの度2024年8月に金利を上げたことで、この状況は一層加速することになるでしょう。
住宅ローンの返済期間を
✅20年以下の短期返済
✅35年以上の長期返済
にするかで、それぞれメリットとデメリットがあります。
まずは、短期返済の特徴についてご紹介します。
短期返済では金利がかかる期間が短くなるため、長期返済に比べ利息コストを大幅に抑えることができます。
その結果、支払総額を少なくすることができるようになります。
借入期間が短いと、そのぶん金利上昇や収入変動のリスクが少なくなります。
ローンを早期に完済することにより、家計の自由度が増し、将来の資金計画を柔軟に進めることができます。
早期に住宅ローンを完済することができれば、その後の収入は住宅ローン以外の投資や貯蓄に回すことができます。
何より精神的負担も軽減され、より早く資産形成を進めることができる可能性が広がります。
短期返済の場合、月々の返済額が増えるため、家計への負担も大きくなります。
その結果、生活費のやりくりが難しくなったり、他の出費を抑える必要が生じてしまうかもしれません。
無理をしすぎてしまうと、そもそも家計が回らなくなってしまうのです。
毎月の返済額が高額になると、
・事故や病気による医療費
・家電や車などの修理費
・冠婚葬祭にかかる費用
・災害時の緊急費用
・子どもの教育資金
など、万一の出費や緊急時のための貯蓄が減少するリスクもあります。
さらに、余剰資金が減少すると、資産形成のタイミングを逃してしまったり、旅行の機会が制限される可能性があります。
続いて、住宅ローンにおける長期返済のメリットについて見ていきましょう。
長期返済は短期返済時に比べ、毎月の支払い額が少なくなるため、家計に余裕が生まれます。
これにより、生活費や他の支出にも柔軟に対応することができるようになります。
この「毎月返済額の軽減」をメリットに感じて、長期返済を選択する人がいま増えているのです。
毎月の返済負担が軽くなると、手元の余剰資金をNISAやiDeCoなど他の投資や貯蓄に回すことができるようになるかもしれません。
住宅ローンの利息よりも投資の運用益を高く出せる自信がある方は、この方法で資産形成の幅が広がります。
長期返済の場合、インフレの影響を軽減することができます。
今の価値のまま長期でローン金利を固定できるため、将来の物価上昇に対する負担を相対的に軽減することができる可能性があります。
長期間にわたる返済は、その分支払う金利が多くなります。
その結果、最終的な支払総額は短期返済に比べ大きく増加します。
お金を借りる側の負担は増えますが、貸す側としてはこれほど「おいしい」ビジネスはありません。
返済期間が長ければ長いほど、金利上昇や収入減少などのリスクの可能性が高まります。
また、冒頭で取り上げた年功序列や退職金モデルが崩れてきている中で、経済的にもこれからさらに不確実な状況が続くでしょう。
そのようなリスクに直面したときの、長期的な精神的負担も考慮する必要があります。
長期返済の場合、他の投資や貯蓄に回す資金が限られるため、資産形成のスピードが遅れる可能性があります。
資産形成のタイミングが後ろ倒しになりすぎてしまうと、老後資金をつくることが難しくなってしまう懸念があります。
住宅価格が高騰している今、10~20年間という短期間でのローン返済が難しい世帯が増えています。
一方で、長期返済は引き続き、住宅ローンの一般的な選択肢として残り続けています。
そんな中、私が感じている最も危険な住宅ローンの組み方は「35年以上の超長期ローン」です。
「35年よりも長期間にしないと、毎月の返済額が高すぎて返済できない」
「だから住宅ローンは40年での返済を選んだ」
このような人は、一度立ち止まって、自分に合った住宅ローンの組み方や、そもそも住宅ローンを組むべきかどうかも含め、見直すべきでしょう。
あなたが「月々返済額が意外に安いな」と感じた住宅や不動産のチラシも、よく見てみると「40年返済の場合」という表記があるかもしれません。
銀行でのローンの提案も、いつの間にか40年での返済がスタンダードになってきています。
「希望物件を購入するためには毎月のローン返済額が厳しいから、返済年数を延ばそう」
このような考え方は危険です。
長くても30~35年の期間で返済できる購入額まで下げるのが、長期返済時の安全な考え方です。
あなたは40年後、何歳でしょうか?
いまと変わらずに収入があり、返済し続けられる年齢でしょうか?
大前提として、収入が見込める年齢、例えば65歳までに住宅ローンを完済できる目途を立てておきましょう。
【年齢+ローン返済年数=65歳以上】となる場合は、より慎重に住宅ローンの返済計画を立てることが重要です。
「こんなハズじゃなかった」という、将来のローン破綻を防ぐためにも、事前にしっかりとした無理のないライフプランを立てるようにしましょう。
※1日本経済新聞「住宅ローン、返済期間が二極化 「35年超」は3年で倍増」
~新潟住まいのお金相談室ブログ「住宅ローン返済:早期 vs 長期返済のメリット・デメリット あなたの選択は?」より~