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住宅ローン破綻を防ぐ秘訣とは?~家を建てる「前」が重要~

昆知宏(新潟住まいのお金相談室 代表)

通帳に残った84円。住宅ローンが引き落とされた後の状態です。

先日、住宅ローンの返済に苦しむ人を特集したテレビ番組を見ました。

演出も多少はあるだろうと思いましたが、これは、決して他人事ではないかもしれません。

なぜなら、私の家族も同様の経験をしたからです。

私が小学生だった頃、両親は家を購入しました。

新築当初は集合住宅で飼ってはいけなかった犬を飼い始めたり、ピカピカのダイニングに家族が集まり、みんなで食事を楽しんだり、自分だけの部屋を満喫したり。

当時の楽しかった思い出は、まるで絵に描いたようでした。

ところが数年後、状況が一変します。

両親は住宅ローンの返済が苦しくなったようです。

お金のことで口論が絶えず、家の中は常にピリピリとした雰囲気で、「今月もオーデー(OD)」という言葉をよく耳にしました。

「OD」とは、銀行用語でオーバードラフトのことです。

預金が不足しても自動で融資され、延滞にはなりません。

しかし、その埋め合わせはどこかで必要になります。その結果、家計はさらに苦しくなっていくのです。

住宅ローンで無理してお金を借りると、生活が破綻する可能性もあります。

ローン返済後に84円しか残っていない通帳。

そのような悲劇的に感じる状況ですら、マイナスではないだけ、まだマシなのかもしれません。

住宅ローン破綻は誰にでも起こりうる

これから家を建てようと思っているあなたなら、住宅ローン破綻は絶対に避けたいですよね。

でも、住宅ローン破綻は誰にでも起こりうることです。

特に近年の長引く不況や不安定な収入、病気やリストラなども、返済を難しくする要因となっています。

また、金利上昇や収入減も大きな影響を与えます。

といっても「住宅ローン契約時にそんな先のことまでは分からないよ…」と思う人が多いのでしょうか。

住宅ローン破綻を防ぐためには「住宅ローンはいくらまで借りられるか」ではなく、「いくらまで借りて良いか」をライフプランに基づいて慎重に検討することが重要です。

ライフプランを作成してから、しっかりと考えることが大切です。まずは住宅ローン以外に必要になるお金について、考えることが重要です。

住宅購入後に、ローン以外にも備えるべきポイント3選

住宅を購入した後は、ローン返済以外にも備えるべき点があります。

少なくとも以下の3つについては、あらかじめ備えておくことが必要です。

  1. ① 維持費や固定支出
  2. ② 家電・設備の買い替え
  3. ③ 金利リスク

では一つずつ確認してみましょう。

① 【意外と大きい】維持費・固定支出

家にかかる費用としては、固定資産税、火災保険、住宅設備の修繕費などがあり、家計に重くのしかかります。

例えば、固定資産税は月1万円程度、火災保険は年間3~5万円程度かかります。なお、自然災害が増える昨今、火災保険料は年々上昇しています。

また、光熱費は住宅の規模や家族構成によって増えるため、太陽光発電を導入しても必ずしも経済的とは言えません。

太陽光発電を導入しても、初期費用や設備の維持・修理費用・将来の撤去費用を考えると、必ずしもお得とは言いきれない場合もあります。

② 【タイミングが重なる場合も】家電や設備の買い替え費用

家電や住宅設備も修繕や入れ替えが必要になってきます。

買い替えのタイミングにもよりますが、住宅設備の不具合は、築5~10年頃から出始めます。

ちなみに私の場合は、5年を過ぎたあたりでアパート時代から使っていた冷蔵庫・洗濯機が続けて壊れたため、買い替えが必要になりました。

さらに築10年を過ぎた頃には、食洗機、エアコン、給湯器といった家の設備の修理や交換で、60万円ほどかかりました。

この後は外壁の修繕など、多額となる支出も控えています。外壁塗装は足場が必要なため、特に費用がかさみます。

いつかは壊れるものなので、これらの出費も計画しておき、あらかじめコツコツと備えておくことが必要ですね。

③ 【上昇中!】変動金利のリスク

変動金利で住宅ローンを組んでいると、金利の上昇が家計を圧迫することもあります。

変動金利は今後上昇局面に入ると予想されます。

そのため、金利上昇リスクも考慮し、借入額を慎重に見極めることがますます重要になります。

…いかがでしたでしょうか。

家を建ててローンを組んだ後は、長年にわたる住宅ローンの返済はもちろん、上記でご紹介したような住宅関連の支出を減らすのは難しくなります。

その結果、食費や小づかいなど、日常生活の中で目に付きやすい部分を節約するしかなくなります。

さらに、子どもの教育費が加わると、家計はますますピンチに。

「でも…金利が上がったら、そのときに固定金利に借り換えればいいのでは。」

こういう意見もたまに耳にします。

ですが、実はそう簡単にはいかないのです。

住宅ローンの借り換えは簡単ではない

住宅ローンの金利が上がり、返済が苦しくなると、多くの人は借り換えを検討します。

ですが、過去に延滞や遅延、その時の勤務先状況により、借り換えは難しくなります。

当時、私の母も借り換えを検討しましたが、断られたそうです。

固定だとこの先、金利が上がらない保証はあっても、月々の実際の返済額は当初の想定よりも上がります。かといって有利な変動金利への借り換えは厳しい。

そう簡単に借り手に都合よくはいかないものです。

こういった事態を避けるためにも、大切なのは借りる前の計画。

最初から、

  • 住宅ローンはいくらまで借りても大丈夫か
  • 無理のない年数・借入額など、詳細な借り入れ条件

これらを設定することが大事です。

住宅ローンは自分でしっかり選ぼう

住宅購入で後悔しないためには、最初に相談する金融機関選びが非常に重要になってきます。

住宅会社などが勧める返済方法に安易に乗らないようにしましょう。

具体的には、将来の返済額が少なく見える変動金利や、返済期間の40年設定、またボーナス払いの比重を高くする提案です。

ボーナスが予定通り増額していくとは限らない、など上記には特に注意が必要です。

売り手は、少しでも返済額を安く見せて契約を取りたいと考えているからです。

また、最近増えている超長期ローンは、返済終了時の年齢や収入状況をよく考える必要があります。

最近増えてきた超長期の返済年数。

これも40年後に、自分は何歳になるのか、定年になっていないのかなど、よく考えるべきです。

年齢的に収入が減ってからの返済は、あなたが思っている以上に、毎日の生活を厳しくします。

住宅購入前にライフプランを作ろう

住宅ローン返済に苦しむ未来を避けるためには、家を買う前にライフプランを立てることが不可欠です。

将来の収入と支出を見積もり、家にいくらまでお金をかけても無理がないか。これを把握することで健全な家計を維持できます。

繰り返しますが、家を建てた後では、できることが限られます。

マイホームを手に入れても、家計が苦しくなり夫婦仲が悪化しては本末転倒です。

子どもにとって、両親がお金で言い争う姿を見るのは辛いものです。

あなたにはそのような思いを絶対にしてほしくありません。

まとめ

住宅ローン破綻は絶対に避けたいものです。

そのためには、家を購入時に事前に計画を立て、自分の世帯が負担できる範囲でローンを組むことが大切です。

将来の不安を減らし、家庭内の不和を避けるために、賢い選択をしましょう。

日ごろの生活に無理のない住宅ローンの金額が一体いくらなのか、まずはきちんと「知る」ことが必要です。   
 

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