【リノベーション】半世紀を経たプレミアム感と豊かさに包まれる
半世紀を経たプレミアム感と豊かさに包まれる
ありのままを大切にしながら、新たに輝く価値を創造する
長く東京で働き、定年後にUターンしたHさん夫妻は、両親が住んでいたマンションに移り住むことになった。
高齢の母との同居を機にリノベーションに踏み切ったのは、2017年のこと。
「ここは1970年にできたマンションで、両親は新築当初から暮らしていました。室内にいくつか段差があり、水回りなどの設備も古くなっていましたが、まだまだ暮らせるようにしたいと思ったのがきっかけ。2世帯が快適な生活を送ることができるような改修を、地元のビルダーに依頼しました」とHさんは振り返る。
H氏邸は和室、居間、キッチンとダイニング、寝室が横並びになっており、4室を広々としたバルコニーがつないでいる。
今回は、和室を除いた3室とバルコニーをリノベーションした。
構造部分まで手を入れた大規模改修を行ったのは主に水回り部分。他は既存を生かし、住み心地を高める工夫を凝らしている。
玄関ドアを開けると目に飛び込んでくる居間の壁面は、旧宅の石壁に奥さま自ら珪藻土を塗ったもの。
大谷石の重厚な壁面が珪藻土の白で軽やかな表情に生まれ変わり、黒の塗料がアクセントになっている。
シンプルな間取りはそのままに、Hさんと奥さまのセンスで彩られた住まい。
時を重ねたワインが熟成するように、築年数の長いマンションもその価値を高めることがある。
H氏邸は「ヴィンテージマンション」の名にふさわしい住まいに生まれ変わった。
今度は何を育てようか。都会の空中庭園で紡ぐ時間
H氏邸で最も変わったのはバルコニー部分かもしれない。
「以前は大量の土を入れた『森のような庭』だったんですよ。築山のように土を盛り上げた箇所もあり、庭師も入る本格的なものでした。リノベーションにあたって、土を取り除き、ウッドデッキを敷いたバルコニーに作り替えてもらいました」とHさん。
直植えの植栽をやめ、テーブルと椅子を置けば、マンションのバルコニーとは思えないすてきな空中庭園が生まれた。
2人はここでバラ、トケイソウ、クレマチスなど、四季折々の植物と草花を育てる。
「内と外を立体的に使える空間になったね」とHさんが言えば、「東京では庭いじりなんてしたことなかったのにね」と奥さまがほほ笑む。
水回りも使いやすくリノベーションした。
勝手口をなくし、ダイニングの中央を占めていた洗面脱衣室と浴室を移動。
ダイニングスペースを見渡すキッチンと近くなり、家事効率もアップ。
一方で寝室にはほとんど手を加えず、モダンな雰囲気をそのまま残している。
どの部屋にいても、昔からあったような空気を感じるのはH氏邸ならでは。
何もかも新しくするのではなく、あるものを残して生かすリノベーションには、「アンティーク好きな奥さまのコレクションが似合うように」というHさんの優しさが込められている。
好きなものに囲まれて暮らす幸せがここにある。
新潟市 H氏邸 Renovation Data
家族構成 | 夫婦 |
物件情報 | 築50年 |
延床面積 | 136m2(41.14坪) |
リノベーション面積 | 102m2(30.85坪) |
竣工年月 | 2017年5月 |
設計期間 | 3カ月 |
工事期間 | 2カ月 |
内装仕上 | 床:アートクチュール/壁:クロス張り・断熱材グラスウール/天井:クロス張り・断熱材グラスウール |
設備 | キッチン:タカラスタンダード/バス:タカラスタンダード/トイレ:タカラスタンダード |
開口部 | ドア:リクシル |
取材協力 | (株)殻殻ふぁくとりー |