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【変動金利と固定金利】住宅ローンの後悔しない選び方

昆知宏(新潟住まいのお金相談室 代表)

2023年4月の住宅ローン金利が発表されました。

【変動金利】年0.725%(年初から±0)
【10年固定金利】年1.200%(年初から+0.5%)
 ※第四北越銀行

【フラット35(※完全固定金利)】1.76%(年初から +0.08%)
 ※高性能住宅の場合は当初10年 1.26%

昨年12月に発表された日本銀行サプライズ。

その影響を受けて、地方銀行の10年固定金利やフラット35も順当に金利が上がってきました。

第四北越銀行の変動金利と比較すると、フラット35は約2.6倍。

ですが、フラット35は最初の10年間が高性能住宅だと優遇が受けられます。なので実際は、変動比で1.9倍水準。

金利優遇を受けられない性能の住宅の場合、フラット35は候補にも挙がらない状況です。

こんな状況に、ある変化が起きています。

それは、今までは固定志向だった人が変動志向になっているということ。

私は何となくこのトレンドに胸騒ぎがします。

変動と固定の差がここまで開くと、いよいよ変動金利が上がるXデイも近いのでは? と思ってしまうからです。

住宅ローン選択はどう考えればよいの?

少し前までは、私はどちらかというと固定金利推しでした。

というのも変動金利の利点は金利の低さ。

それを組み方とテクニック、そして条件に該当すれば、固定金利でも変動金利とほぼ同等にできていたからです。

こういうのは制度のバグみたいなもの。

日々金利を追いかけていると、たまに一定期間登場します。

2021年から2022年の前半はそんな状況でした。見つけられれば、利用した者勝ちみたいなところがあります。

それが今は、固定金利は全部上がってしまいました。全部です。

なので、変動金利比較で2倍近くなった今「固定金利でいいか?」と聞かれても、とても判断が難しいと思います。

もしFPの私が自分の住宅ローンを組むとしたら?

「昆さんが家買うなら、どっちにします?」

と聞かれても、正直なところ「うーん…」と迷ってしまいます。

少なくても細かく家計分析してみないと答えられません。

具体的には、

・土地建物総額
・貯金額
・借入額
・現在の年齢
・今後の収入の安定具合
・ボーナスの可能性

これらを総合的に考えないと、変動or固定金利のどちらが良いのかという判断ができません。

例えば頭金が全体の50%もあったり、年収が1,000万円以上もある。

それならさすがに変動でいいんじゃないか、と思います。

もし自分がそうなら、自分でも変動にするかなという感じです。

断定できることと言えば、変動に向いていない家計については『ライフプランを作成』さえすれば明確に分かります。

そう、こんなに金利の差が開いていても「変動は避けた方がいい」家計があるんです。

ライフプランで読み取る住宅ローン

ライフプランを作ると、家計は以下の3つに分類されます。

その中にはセオリー上、変動金利のリスクが高い家計も含まれています。

どのようなライフプランがリスクが高いのか、ぜひ考えながら比べてみて下さい。

① 右肩上がり型

右肩上がり型は、家を買っても貯金ができるケース。

つまり固定支出よりも収入の方がはるかに多い、という場合です。

そういう方は、上記のようなライフプランの波形が見られます。

② 右肩下がり型

右肩下がり型とは、家を買ったら貯金ができないケース。

つまり固定支出よりが、収入が少ない場合です。

このようなケースでは変動金利を選択した場合、もし金利が上がっても打つ手が少なく危険です。

変動金利は避けた方がいいと思います。

固定金利で組んで無理のないローンの範囲内で家を建てることが賢明です。

③ 現状維持型

現状維持型の傾向は、現状の収支でうまく回していけるケース。

お金の使い方が人生全体で見た時、ある意味丁度いいと言えます。

ですが、物価上昇や金利上昇などの外的要因によって影響を受けやすいとも言えます。

あなたの家計が、3つのうちどれに該当するかはライフプランを作ってみないと分かりません。

明確に言えるのは、ライフプランの波形が右肩下がりor現状維持型の場合は、変動金利によるリスクが高めということです。

理由はカンタン。

金利上昇が、あなたの家計を壊す引き金になってしまうからです。

右肩下がりと現状維持型にとって変動金利はコントロールできない時限爆弾のようなもの。

そんなものを家計に内包させてはなりません。

変動金利は「先行逃げ切り型」

「そうはいっても、金利がこんなに違うのに⁉」

「変動金利の返済額でないと、毎月の返済が厳しい。」

…このように感じる方もいるかもしれません。

固定金利で計算した毎月の返済額を見たときに「返すのがしんどそうだな。」と感じたら、そもそもあなたはその額で家を買うべきではありません

住宅購入で得られるリターンとリスクが釣り合っていないのです。

快適な場所に快適な住まいを求めるのは当然です。ですが、現実的な身の丈に合っていない可能性が高いと言えます。

では、どんな場合だったら変動金利でリスクが少ないのでしょう?

答えはシンプルです。

変動金利のリスクと向き合える人は、「繰り上げ返済がいつでもできる人」です。

金利が上がる場面に出くわしたら、繰り上げ返済で元金をがつがつ減らせる人。

もしくは金利が本格的に上がる前に、元金をがつがつ減らせる人。

言うなれば、先行逃げ切り型です。

先行逃げ切りには、スピードとスタミナが必要です。

【先行逃げ切りには「スピード」と「スタミナ」が必要】

スピード:金利が上がってきたら繰り上げ返済をする瞬発力
スタミナ:金利が上がり続ける場面で、絶えず返済できる継続的な現金収入

これらの条件が揃えば、変動金利でも逃げ切れる可能性が高いと言えます。

変動金利のリスクは家計の余裕次第

例えば、毎月の収入だけで月の固定費を払いきれる家計では、ボーナスはおまけです。

「その気になれば、ボーナスを全額繰り上げ返済に充てることだってできるぞ!」

こんな雰囲気ならスタミナが抜群と言えます。

リスクを回避するための原資として、「貯金に回せるボーナス」があるからです。

また、今現在夫婦で積み立てNISAを満額年間80万円できている人。

そういう方も、スピードとスタミナがありそうです。

投資は貯金と大差ありません。

リスクある金融商品にそれだけ投下できる、ということは余裕そのものです。

「そんなのすべて高収入が前提でしょ」と思わないでください。

実は高収入であるかなんて関係ないんです。

収入と支出のバランスがうまくできているかがすべてです。

高収入でも高支出であれば余裕なんてありません。

【POINT】
住宅ローン検討時に大切なこと=家計における収入と支出のバランス

一方、平均並みの収入でも、住宅支出に代表する家計の支出をうまく管理できていれば余裕は生まれます。

家を買う前ではあれば、住宅購入額や住宅ローンの金利対応はあなたの好きに決められます。

今後の収支見通しが明確であればあるほど、変動金利のリスクはしっかりとコントロールできる。

要は、こういうことです。

 

PS.家計以外のポイントは「性格」

あとは実際のところ、性格面も影響してきます。

先行逃げ切り型は、常に金利上昇がいつかという不安に追いかけられる。

対応策があれば、その不安はかなり軽減できることになります。

ですが、借金が変化することにメンタル的に耐えられない人は向いていません。

金利が上がった時に、繰り上げ返済など要所要所で考え行動することが面倒な人も向いていません。

【実際の家計グラフ×あなたのメンタル】

金利選択における最適解は、これらの総合的な答えなのです。

 

~新潟住まいのお金相談室ブログ「【変動金利と固定金利】住宅ローンの後悔しない選び方」より~

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